里山インキュベーターいびがわ2018年入門講座 先輩に聞く!座談会「かご屋 moily」池宮聖美さん報告書

カンボジアの伝統的なかごをおしゃれなブランドに生まれ変わらせ、村人の仕事づくりをしている「Moily」池宮さん。起業したのは2014年。今回の座談会では、なぜ、カンボジアのかごなのか? そして、起業に至るまでの失敗談の数々を語っていただきました。

初めての海外、あまりの衝撃に夢がとん挫!?

今日は、私の失敗談をいっぱいいっぱいお話しします。なぜなら、自分が起業する上で役立ったのは、成功談より断然失敗談。やはり失敗から学ぶ方がためになると思うからです。

まずは、そもそもこの仕事をすることになったいきさつからお話します。

私は幼いころから「先生になること」を目指してまっしぐら。大学は教育学部で、大学3年になるまでは海外に全く興味がない人間でした。ところが3年の時、発展途上国でのボランティア経験が教員採用試験で有利になるだろう…そんな不純な動機でカンボジアへ行きました。『紛争→地雷→かわいそうな子供たち』、そこでボランティアしたら高評価かなぁ…そんな邪な思いでした。

ところが、現地についですぐ、もの凄い衝撃を受けました。カンボジアの人々はかわいそうどころか、ものすごく元気でエネルギーに満ち溢れている! 通りを一本入れば庶民の日常があり、明るく話しかけてくれる人々がいっぱい。彼らの笑顔はパワー満載、家は掘っ立て小屋かもしれないけど、自分とは違う価値観で幸せを感じていることが心に突き刺さりました。

そのときに強く思いました。

「自分は、発展途上国のヒトは貧しくかわいそう……そんな狭い見方しかできていない人間。このまま先生になってはいけない! 世界を見るまで先生になれない!」

この衝撃で世界を回ろうと決意。カンボジアから帰ったあとはバイトでお金をため、大学4年のときにバックパッカーで世界旅行へ出かけました。

貧困が他人事でなくなっていく

出かけた先はアフリカ諸国、ネパール、インド、中東、南米の国々。なるべく現地の人々の生の声を聴きたいと思い、ホームステイしたり、小学校で教えたりと、いろいろな経験をしました。そんな中、知り合った人々、親しくなった生徒たちが、貧困故に理不尽な思いをしていることをたくさん見聞きしました。そして、今の自分につながる苦く辛い出来事がケニアで起こりました。

ケニア滞在中、同い年の女性ととても意気投合して親友になりました。職業は売春婦です。それを聞いた私は(社会が違うんだから、そういうこともあるんだろう…)と思い、本当に何の悪気もなく”どうしてその仕事を選んだの?”と聞きました。

すると、どんなときも笑顔だった彼女の顔がみるみる曇り

「日本人のキヨミに、この気持ちわからないでしょ! 私にはこれ以外の選択肢はないの!」
と苦しそうに言われました。本当にショックでした。仲の良い友だちがこんなにも苦しんでいるのに自分には何もできないのです。

自分ではどうしようもない国の格差があり、たまたま日本に生まれた私には、彼女にはない選択肢がある。私は何でもやれるのです。であるなら、私はこの人たちのために仕事を創りたい! 親友の出来事から、そう強く思うようになりました。

対等な関係を作ることの難しさ、最初のパートナーとの決裂

「発展途上国のヒトのために仕事を創ろう」。その想いが固まったとき、それまで気にかかっていたことを心に留めることにしました。

それは、現地の人が自分たちの力で仕事をしてお金をかせぎ、自分たちの力で生活を成り立たせるのを目指すということです。訪れた先々で、先進国のお金をあてにした人々に幾度か遭遇しました。それは、その人たちのせいではなく、これまでの先進国支援が、現地の人たちの声を聴かずに一方的になされた結果だと思います。私はこの依存を生む関係を繰り返さないよう気を付けなければと思いました。

世界旅行から日本へ戻って大学を卒業。それと同時に起業を決意しました。2011年の春です。それから3年間はベンチャー企業で武者修行をして2014年、いざ海外へ!カンボジアを選んだ理由は、最初に目を開いてくれた国だからです。何を売るか、何が現地の人々の仕事になるのか何の当てもありませんでしたが、『ネット検索でひっかからないモノ』を探そうとだけ決めて「売れるモノ」探しを始めました。そして数カ月が経ったある日、市場で売っていたかごの山に目が留まりました。

≪かわいい!これだ!≫直観です。『ラペア』と呼ばれるつるで編んだかごとの出会いが訪れました。

ここから、日本で売れる製品完成までいろんなことがありました。最初に訪れたかご職人の村は、訳の分からない外国人を不審がり、何度通っても門戸を開いてくれることはありませんでした。

次に出会ったのは、アメリカの団体が支援するかご工房の村。ここでは『ラペア』のかごの作り方やカンボジアの人々の働き方について多くを学びました。しかし、すでにアメリカの団体と提携しており、この村で私が発注することはできませんでした。そして次に出会った村では、今も心が痛む、大きな失敗がありました。

アメリカのNGOが運営する工房で会ったAさんという現地女性が私の想いに共感してくれて、一緒に事業を行いたいと申し出てくれました。私にとっては待望の右腕の登場です。こうして『ようやく、自分のやりたいことを実現させられる!』と喜び勇んでアンコールワットがあるシェリムアップの近くにある村で準備を始めました。今度は、人々との人間関係を築くことからスタートし、村人たちと一緒に歩んでいるつもりでした。当時私がこだわったのは、日本で売れるかごづくりのため『クオリティーは妥協しない』『納期をきちんと守ってもらう』ことの徹底です。特に品質については、かなり厳しいチェックを行いました。

右腕だったAさんには、品質チェックの仕事、つまり職人さんへのダメ出しの仕事を任せました。私が日本へ行っている間も滞りなく仕事が進むようにするためです。しかし、それが良くありませんでした。Aさんが村の中で悪者になってしまい、彼女はそれに苦しみ、私への不満を募らせていきました。また、いつの間にか私自身が『私はあなた達のために、仕事をつくってあげる』んだから、『いいものをつくるために、ダメなものをダメと言って当然』という傲慢な態度になっていたのです。Aさんから

「キヨミにはついていけない!もう一緒にはできない」

とノーをつきつけられたときは本当にショックでした。最終的には職人さんたち全員が彼女の味方をして私の元を去っていきました……。

納期優先、品質優先で、私は村人にとって大切な祭りがあることさえ気づかずに納品を迫っていました。Aさんたちが離れていくのは当然のことだったと思います。

日本と同じ発展にならないために

ゼロからやり直す事態になり、『村人をハッピーにしたい』という本来の目的のため、自分はどんなふうに仕事をしたらよいのか問い直しました。そして、まずは自分が在庫を調整し、職人さんに無理な生産をさせなくてすむようにしました。相手が大事にしていることを尊重し、相手の想いや考えをリスペクトするとはどんなことかが徐々につかめるようになりました。そうすると、みんなとの関係がどんどん良くなり、仕事がうまくまわるようになるんです! 今では多くの人が助けてくれるようになり、ベテランの職人さんが若手のモチベーションアップをしてくれるなど、良い循環が生まれています。そして、

「キヨミがかごを高く買ってくれるから、家族と一緒にこの村で暮らせるんだ」
と言ってくれる人もいて、とてもハッピーな輪が広がっています。

ようやく日本でかごの販売が軌道に乗ってきました。カンボジアの農村はまだ貧しく、日々の生活に困ったり、薬が買えないような状況にあります。ですから、まずは仕事をつくっておカネを得ることに重きを置いています。しかし、本当の目的は、おカネをかせぐことではなく、途上国の人たちの豊かな暮らしを先進国とは違う道筋で実現することです。それぞれの地域でずっと受け継がれてきた技術を守りながら、暮らしを豊かにする仕組みがつくれたら……これからもその目標に向かい、頑張りたいと思っています。

参加者からの質疑応答・感想・その他コメントの要約

≪①参加者:その他コメント≫自分は企業の管理部門で長年働いてきたので、池宮さんが今、困っている状況(販売量が伸びて事務に手が回らない)のサポートができると思う。協力したい。

≪池宮≫大変ありがたい、是非お願いします。

≪②参加者:その他コメント≫Moilyさんに第3カテゴリーのフェアトレードショップになっていただき、垂井町をフェアトレードタウンにしていく協力をお願いしたい。私たちならではのフェアトレード運動を展開していきたい。ぜひご一緒に。

≪池宮≫もちろんOKです!

≪③参加者:質問≫日本での販路はどうやって開拓したんですか?

≪池宮≫SNSの効果が大きかった。インスタグラムで「かご」のハッシュタグをつけたら、遠方のかごギャラリーやネットショップオーナーが見つけてくれて、是非、商品を見せてくださいと連絡をくれた。そこから販路がかなり開けていった。

≪④参加者:感想≫池宮さんの話を聞いて、自分のやりたいことに向き合って生きて良いのだと強く思えた。それは今の自分にとってとても勇気づけられること。今日参加して本当に良かったです。

≪⑤参加者:質問≫海外で仕事をするためには、自分を理解してもらうことが必要だと思う。バックグラウンドの異なる海外の人とのコミュニケーションで、心がけていることは?

≪池宮≫これは海外日本問わずだが、相手に対するリスペクトを忘れないようにしている。海外では、現地の言葉で「こんにちは」「おいしい」「ありがとう」、これらを必ず覚えて頻回に使うようにしている。相手のことを知りたい、興味を持つという態度は大事だと思う。

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